世の中には、ときどき「やっていて当然」「知っていて当然」みたいな顔をして迫ってくるものがある。
NISAとVIVANTである。
いや、同列に並べていいのかは知らない。片方は資産形成に関わる制度で、もう片方はドラマだ。重要度も実用性もまったく違う。
ただ、世間からのプロモーションの強さという点では、ちょっと似ている気がする。
NISAをやろう。VIVANTを見よう。
やっていない? 見ていない?
……えっ、なんで?
別にいいじゃないか。こちらにも事情がある。
いつの間にか「おすすめ」が「当然」になる
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度だ。資産形成を考えるうえで、知っておいて損のない仕組みである。
私自身、投資をしているし、NISAも活用している。
だから、NISAをおすすめしたい人の気持ちはわかる。せっかく税制優遇があるのだから、利用できるなら利用したほうがいい。そう考えるのは自然なことだと思う。
一方、VIVANTについてはどうか。
筆者は見ていない。
世間で話題になっていたことは知っている。人気作品だったことも、盛り上がっていたことも、なんとなく知っている。
それでも見ていない。
見ていないのだから、面白いかどうかも知らない。面白くないと思っているわけでもない。ただ、見ていないのである。
ところが、世の中で何かが大きく盛り上がると、いつの間にか「おすすめ」の域を超えてくることがある。
「これ、絶対やったほうがいいよ!」
「これ、絶対見たほうがいいよ!」
最初は親切なおすすめだったはずなのに、気づけば、やっていない人や見ていない人のほうが不思議な存在になっている。
そのうち、やっていないとお金のことを何も考えていない人みたいに扱われたり、見ていないと世間の話題についていけない人みたいに扱われたりする。
いや、そこまで言っていない?
そうかもしれない。
でも、あまりにも強くおすすめされ続けるとそんな圧を感じてしまうことがあるのだ。
やらない理由を説明しなければならない不思議
そもそも、何かをやっていないことに、いちいち理由が必要なのだろうか。
VIVANTを見ていない。
それだけでいいはずなのに、「なんで見ないの?」「絶対面白いのに!」と聞かれると、こちらも何かしらの理由を用意しなければならないような気分になる。
忙しかったから。見る機会がなかったから。ほかに見たいものがあったから。
別に、立派な理由なんてない。
なんとなく見ていない。それだけだ。
NISAについても、もちろん事情は人それぞれだ。投資に回すお金がない人もいるし、元本割れが怖い人もいる。制度を調べる時間がない人もいる。自分には必要ないと判断している人もいるだろう。
それなのに、NISAをやっていないという一点だけで、その人のお金に対する姿勢まで決めつけるのは違うと思う。
人には人の事情がある。
そして、事情がなくても、やらない自由はある。
世間がどれだけ盛り上がっていても、全員が同じものを好きになるわけではないし、全員が同じタイミングで始めるわけでもない。
当たり前の話なのに、話題が大きくなるほど、この当たり前が見えにくくなる。
ただし、NISAとVIVANTには違いがある
ここまでNISAとVIVANTを並べてきたけれど、もちろん、この二つは同じではない。
VIVANTを見なくても、基本的には困らない。
話題についていけない瞬間はあるかもしれないが、見ていないことで資産形成の機会を逃すわけではない。見たくなったら見ればいいし、最後まで見ないままでもいい。
一方、NISAは制度そのものを知らないままでいると、税制優遇を活用する機会を逃す可能性がある。
だから私は、NISAを知らない人には、制度の存在くらいは知っておいてほしいと思う。
ただし、知ることと、利用することは別だ。
制度を知ったうえで、自分の家計や考え方に合わないと判断するなら、それもひとつの選択である。
誰かが満額投資しているから、自分も満額投資しなければならないわけではない。
SNSで投資の成功談が流れてきたからといって、自分も同じように資産を増やせるとは限らない。
大事なのは、世間の熱量に押されて動くことではなく、自分にとって必要かどうかを考えることだと思う。
NISAは便利な制度だけれど、制度に使われてはいけない。
これは、以前から私が考えていることでもある。
おすすめはうれしい。でも、圧はちょっと困る
誰かが好きなものをおすすめしてくれるのは、基本的にはありがたいことだ。
自分では知らなかった作品に出会えるかもしれないし、知らなかった制度を知るきっかけになるかもしれない。
だから、おすすめすること自体を否定したいわけではない。
ただ、おすすめが強くなりすぎて、「やっていない人はおかしい」「見ていない人は損をしている」という空気になると、少し息苦しい。
私はNISAをやっている。
でも、VIVANTは見ていない。
この二つを並べてみると、世間でどれだけ話題になっているかと、自分が実際にそれを選ぶかどうかは、別の話なのだと改めて思う。
もちろん、いつかVIVANTを見る日が来るかもしれない。来ないかもしれない。
そのときは、そのときだ。
NISAだって、投資を始める前には自分なりに考えた。世間がやっているからという理由だけで始めたわけではない。
みんながやっているから、自分もやる。
みんなが見ているから、自分も見る。
それもひとつの選択ではあるけれど、みんながやっていることを、みんながやらなければならないわけではない。
世間のおすすめは、あくまでおすすめだ。
人生の必修科目ではないのである。
……というわけで、筆者は今日もVIVANTを見ていない。
そろそろ見たほうがいい?
いや、だから、その圧なんだって。

