投資をしていると、含み損について考えることが多い。
株価が下がる。
含み損になる。
つらい。
投資初心者の頃なら、なおさらそうだ。
買った株がマイナスになると、
「買わなきゃよかった」
「このままもっと下がったらどうしよう」
と不安になる。
ところが、投資を続けていると、別の意味で人間がおかしくなる瞬間がある。
それが、
含み益が増えたとき。
株価が上がる。
含み益が増える。
「こんなに儲かってる!」
嬉しい。
ここまではいい。
問題は、その先である。
■ 含み益100万円という数字
例えば、保有株に含み益が100万円あるとする。
100万円。
かなり嬉しい。
でも、売る理由はない。
長期で持ちたい会社だから買った。
配当も欲しい。
だから売らない。
「100万円含み益があるけど、別に売らなくていい」
そんな状態になる。
ところが、株価がさらに上がる。
含み益が120万円になる。
「おお、増えた」
150万円になる。
「おおお……」
200万円になる。
「……これ、売ったら200万円利益確定できるんだよな」
ここから、少しおかしくなる。
売るつもりはない。
でも、利益確定できる200万円が目の前にぶら下がっている。
そして翌日、株価が下がる。
含み益が170万円になる。
すると、
「30万円減った……」
と思う。
いや。
待ってほしい。
買値から見れば、まだ170万円プラスである。
何も失っていない。
それなのに、なぜか30万円損した気分になる。
人間、怖い。
■ 含み益が「自分のお金」になっていく
含み損なら分かりやすい。
買値より株価が下がっている。
数字がマイナスになっている。
だから「損している」と感じる。
でも含み益は少し違う。
最初は、
含み益20万円。
「おお、儲かってる」
くらいだったものが、
50万円。
「結構増えたな」
100万円。
「これで何か買えるな」
150万円。
「……売るのもったいなくない?」
200万円。
「この株、絶対売らん」
となっていく。
まだ売っていない。
つまり確定したお金ではない。
それなのに、いつの間にか自分のお金のような感覚になってくる。
だから、そこから数字が減ると、
「50万円も損した!」
となる。
でも実際には、買値からはまだ150万円プラスだったりする。
冷静に考えると、かなり不思議な現象だ。
■ 「もっと増えるかも」が人間を狂わせる
含み益が増えると、今度は欲が出てくる。
「ここまで上がったんだから、もう少し上がるんじゃないか」
と思う。
100万円の含み益なら、
「150万円くらいまでいくかも」
150万円なら、
「200万円もあるかも」
200万円なら、
「300万円いけるんじゃない?」
こうして、利益が増えるほど基準も上がっていく。
20万円増えたときは大喜びしていたのに、200万円まで増えると、
「200万円を維持してほしい」
と思うようになる。
そして190万円になっただけで、
「10万円減った……」
となる。
いやいや。
最初は20万円で大喜びしていたではないか。
人間の欲望、怖い。
■ 「売らない株しか買わない」の罠
筆者は基本的に、長く持ちたいと思える株を買う。
いわば、
「売らない株しか買わない」
という投資スタイルである。
だから、含み益が増えても、
「じゃあ売ろう」
とはならない。
会社が好き。
配当も欲しい。
長く持つつもり。
だから、そのまま持つ。
これは自分なりの投資方針なので、今のところ納得している。
ただ、面白いのはここからだ。
売らないと決めているからこそ、含み益という数字だけがどんどん大きくなっていく。
100万円。
150万円。
200万円。
数字だけが育っていく。
そして、その数字に少しずつ感情が乗ってくる。
「この利益を失いたくない」
「でも、まだ上がるかもしれない」
「いや、でも今売れば利益確定できる」
「いやいや、この株は売らないと決めた」
頭の中で会議が始まる。
株価が動くたびに開催される。
議題は毎回同じ。
「売る? 売らない?」
そして結局、売らない。
■ 含み益は、嬉しいけれど自分のお金ではない
結局、含み益はあくまで含み益だ。
株を売るまでは確定していない。
明日さらに増えるかもしれないし、減るかもしれない。
大きく減ることだってある。
それなのに、数字が大きくなるほど「自分のお金」のように感じてしまう。
ここが含み益の怖いところなのだと思う。
もちろん、含み益が増えるのは嬉しい。
長く保有してきた会社の株価が上がれば、
「持っていてよかったな」
と思う。
でも、
含み益が増えたからといって、現金が増えたわけではない。
このことは、頭の片隅に置いておきたい。
■ 含み損より、含み益のほうが難しいのかもしれない
含み損はつらい。
これは間違いない。
でも、含み益にも別の難しさがある。
利益が増えるほど欲が出る。
利益が減ると損した気分になる。
売れば利益確定できるのに、売りたくない。
もっと上がるかもしれないと思う。
そして、下がったら悔しい。
つまり、
含み益が増えるほど、感情の金額まで膨らんでいく。
投資を始めた頃は、株価が上がれば単純に嬉しかった。
今は、
「嬉しい。でも、この先どうなるんだろう」
と少し考える。
それでも、最終的には自分で決めた投資方針に戻るしかない。
■ おわりに
含み益は嬉しい。
100万円あれば嬉しい。
200万円なら、もっと嬉しい。
でも、その200万円が150万円になった瞬間、
「50万円損した!」
と思ってしまう。
買値から見れば、まだ150万円もプラスなのに。
よく考えると、かなりおかしい。
でも、たぶん投資をしている人なら、一度くらい経験したことがあるのではないだろうか。
含み益は、最初はただの嬉しい数字だった。
それが大きくなるにつれて、いつの間にか「失いたくないもの」になっていく。
だからこそ、含み益が増えたときほど冷静でいたい。
含み益は嬉しい。
でも、含み益が増えたからといって、筆者のお金が増えたわけではない。
……そう言い聞かせながら、今日も株価を見ている。
そしてまた含み益が増えている。
「おお……」
人間、懲りない。

