新設された【一度きり】の株主優待の功罪

投資・優待

株主優待が新設される。

株主にとって、これほど嬉しいニュースはない。

「優待新設!」

そんなIRを見つけると、つい心が躍る。

しかも、それがかなり魅力的な内容だったらどうだろう。

「この株、ちょっと欲しいかも」

そう思ってしまうのも無理はない。

筆者も株主優待が好きだ。

これまでにもさまざまな優待を楽しんできたし、優待をきっかけに企業を知ることも多かった。

しかし、最近は少しだけ冷静に見るようになった。

特に気をつけたいのが、「今回限り」の特別優待である。

Jトラストの特別優待がすごかった

最近、そのことを考えさせられたのがJトラストである。

Jトラストでは、KPIの達成を記念した特別株主優待が実施された。

内容は、100株以上の株主を対象にした最大10,000円相当のデジタルギフト。

100株保有でも最大1万円相当という、かなりインパクトのある優待である。

しかも交換先が幅広い。

Amazonギフトカードや楽天ポイント、PayPayマネーライト、dポイント、Ponta、QUOカードPayなど、普段の生活で使いやすいものが選択肢に入っている。

「1万円分のデジタルギフト」と聞くだけでもかなり魅力的だが、使い道の自由度が高いのも嬉しいところだ。

株主としては、素直に「これはありがたい」と思う。

ところが、この優待には非常に重要な但し書きがある。

今回限りなのである。

なぜ「今回限り」なのか

今回の特別優待は、Jトラストが重視しているKPIの達成を記念したものだ。

日本保証の信用保証サービス保証残高が3,000億円を突破。

さらに、Jトラストグローバル証券の預り資産残高が5,000億円を突破。

こうした成果を記念し、株主への感謝と、より多くの人に株式を保有してもらうことを目的として実施された。

つまり、突然会社が「毎年1万円配ります!」と言い出したわけではない。

会社としても、今回の成果を株主と共有するための特別な還元という位置づけなのだろう。

これは非常に分かりやすい。

会社が頑張る。

KPIを達成する。

その成果を株主にも還元する。

こう考えれば、一度きりの優待にも十分意味がある。

「一度きり」は悪なのか?

では、一度きりの優待は悪いものなのだろうか。

筆者はそうは思わない。

むしろ、既存株主にとっては嬉しいサプライズである。

企業の周年記念や業績達成の記念など、特別なタイミングで株主に還元することは、企業と株主の関係を良くするきっかけにもなる。

今回のJトラストのように、企業側にも「より多くの人に株式を保有してもらいたい」という目的があるなら、株主数を増やす施策としても合理性がある。

株主は優待をもらえて嬉しい。

会社は新しい株主に知ってもらえる。

まさにウィンウィンである。

ただし、問題はその先だ。

一度きりの優待を「恒久的な利回り」と考えない

株主優待投資をするときに、どうしても気になるのが利回りである。

例えば株価が700円なら、100株で7万円。

そこに1万円相当の優待が付く。

数字だけを見ると、とんでもなく高利回りに見える。

しかし、その1万円は毎年もらえるわけではない。

あくまで今回限り。

ここを勘違いすると、投資判断を大きく誤ってしまう。

「年間1万円の優待がもらえる会社」と考えるのと、

「今回は1万円相当の特別優待がある会社」と考えるのでは、意味がまったく違う。

一度きりの優待を、毎年もらえるものとして株価に織り込んではいけない。

優待を理由に買わない

筆者は以前、株主優待を廃止したことで手放した銘柄がある。

その経験から、株主優待との付き合い方も少し変わった。

優待はあくまで「おまけ」。

これをかなり強く意識するようになった。

もちろん、優待は嬉しい。

優待が届けばテンションも上がる。

しかし、

「この優待があるから、この会社を買う」

という順番にはしない。

まず会社を見る。

業績はどうか。

財務は健全か。

配当は無理をしていないか。

今後も成長できそうか。

そして何より、

「株主優待がなくなっても、この会社を10年持てるか?」

と考える。

この問いに「はい」と答えられる会社なら、優待はプラスアルファの楽しみになる。

反対に「優待がなくなったら持つ理由がない」というのであれば、少し慎重になった方がいい。

「一度きりだからこそ」楽しめる

一度きりの優待にも、良いところはある。

毎年続くことを約束されていないからこそ、企業からの特別なプレゼントのように感じられる。

今回のJトラストのように、企業の成果を記念して実施されるのであれば、

「会社が頑張った結果のおすそ分け」

くらいの気持ちで受け取ればいい。

筆者は株主優待が好きだからこそ、こういうサプライズは素直に楽しみたいと思っている。

ただし、それと投資判断は別問題。

優待をもらえることと、その会社の株を長く持つ価値があることは、必ずしもイコールではない。

株主優待は投資を楽しくしてくれる

株主優待には、数字だけではない魅力がある。

商品が届く。

ギフト券が届く。

割引券が届く。

普段なら行かないお店に行ってみる。

そうした小さな体験が、株式投資を続ける楽しみにもなる。

だから筆者は、これからも株主優待を楽しんでいきたい。

ただし、優待を見て株を買うのではなく、その会社を買った結果として優待が付いてくるくらいの距離感でいたい。

一度きりの特別優待なら、なおさらだ。

おわりに

株主優待の新設は嬉しい。

一度きりなら、なおさら「今だけのお得感」がある。

しかし、その魅力に引っ張られてしまうと、本来見るべきものを見失ってしまうかもしれない。

一度きりの優待には、株主への感謝を伝えたり、新しい株主を呼び込んだりするという企業側のメリットもある。

だから「一度きり=悪」ではない。

大切なのは、それを恒久的な株主還元と混同しないことだと思う。

今回のJトラストの特別優待も、筆者はありがたく楽しみたい。

そして、その1万円相当の優待を受け取ったあとも、

「この会社をこれからも持ちたいと思えるか?」

というところは、冷静に見ていきたい。

株主優待は、投資の主役ではない。

でも、投資をちょっと楽しくしてくれる名脇役ではある。

そのくらいの距離感が、株主優待とは長く付き合っていくうえで、ちょうどいいのかもしれない。

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