夫婦で投資をしていると、ある日突然、不毛な戦いが始まる。
含み益バトルである。
もちろん、誰かに宣言されたわけではない。
「今日どっちのほうが増えた?」
そんな会話から、なんとなく始まる。
そして一度始まると、なぜか気になる。
本来なら、夫婦の資産は家計全体で考えればいい。
夫の株が上がろうが、筆者の株が上がろうが、同じ家庭のお金である。
夫が10万円増えたなら、家計としては10万円嬉しい。
筆者が10万円増えたなら、それも同じように嬉しい。
理屈では分かっている。
それなのに。
「今日、めっちゃ増えてるじゃん」
「そっちもでしょ」
「いや、俺のほうが増えてる」
……なんだ、この会話。
■ 夫婦なのに、なぜか勝負になる
投資をしていなかった頃は、こんな勝負は存在しなかった。
給料が多い少ないという話はあっても、毎日リアルタイムで数字が動くわけではない。
ところが株は違う。
朝、株価を見る。
昼、見る。
引け後、見る。
そして気づく。
「あ、今日は夫のほうが増えてる」
だから何なのだ。
本当に何なのだ。
夫に勝ったからといって賞金が出るわけでもない。
筆者が負けたからといって罰金を払うわけでもない。
むしろ夫の含み益が増えているなら、家計としては喜ばしい。
それなのに、なぜかちょっと悔しい。
人間とは不思議なものである。
■ PFが違うから、そもそも比較にならない
さらに不毛なのが、夫婦で保有している銘柄が違うことである。
筆者は配当や株主優待を楽しみながら、長く持つ前提で株を買っている。
夫は夫で、自分なりの考えで銘柄を選んでいる。
当然、株価の動き方も違う。
筆者の持ち株が上がっている日に、夫の持ち株が下がることもある。
逆もある。
すると、
「今日は筆者の勝ち」
みたいな謎の判定が発生する。
いや、だから何の勝負なのか。
投資はスポーツではない。
得点板もない。
審判もいない。
なのに、なぜか夫婦の間には見えないスコアボードが存在している。
■ 含み益が増えると、ちょっと嬉しい
とはいえ、含み益が増えること自体は当然嬉しい。
10万円増えれば「おお」と思う。
20万円増えれば「おおお」と思う。
さらに増えれば、
「これ、何か買えるんじゃない?」
なんてことまで考え始める。
もちろん、売らなければ実際のお金にはならない。
それでも数字が大きくなっていくと、どうしても気持ちは動く。
以前は単なる株価の数字だったものが、だんだん「自分のお金」に見えてくる。
そして夫の含み益まで大きくなっていると、
「そっち、そんなに増えてんの?」
となる。
自分の含み益には満足しているのに、相手の数字を見ると急に競争心が出てくる。
不思議である。
■ そして翌日には逆転する
もっと不毛なのが、翌日には簡単に順位が変わることだ。
昨日は夫の勝ちだった。
ところが今日は筆者の持ち株が上がった。
すると、
「今日はこっちのほうが増えてる」
となる。
夫婦で同じ家計なのだから、本当なら、
「家計全体で増えてよかったね」
で終わる話である。
しかし、なぜかそこに「どっちが」という要素が入ってくる。
しかも株価なんて、自分たちの都合では動かない。
昨日勝ったから今日も勝てるわけではない。
昨日負けたから今日取り返せるわけでもない。
完全に市場次第である。
つまり、勝負ですらない。
ただ株価が動いているだけなのだ。
■ それでも投資の話は楽しい
では、こんな不毛な含み益バトルをやめたほうがいいのか。
たぶん、やめなくてもいい。
もちろん、本気で相手を見下したり、投資成績を比べて夫婦関係が悪くなったりするなら話は別である。
でも我が家の場合、これは半分遊びのようなものだ。
「今日めっちゃ上がった」
「そっちは?」
「こっちは微妙」
そんな話ができるだけでも、投資を夫婦でやっている楽しさはある。
一人で投資をしていたら、含み益が増えたときに「おお!」と思っても、それを誰かに報告する必要はない。
夫婦で投資をしていると、
「今日どうだった?」
という会話が生まれる。
そしてなぜか、そこから謎の勝負まで始まる。
■ 結局、二人とも増えればいい
最終的に考えてみれば、夫婦の含み益に本当の勝ち負けなどない。
夫の持ち株が大きく上がれば、それは家計にとって嬉しい。
筆者の持ち株が大きく上がっても、もちろん嬉しい。
二人とも上がれば、もっと嬉しい。
つまり、本来は完全なWIN-WINなのである。
それなのに、
「今日どっちが増えた?」
と聞いてしまう。
そして勝ったほうがちょっと嬉しくなり、負けたほうがちょっと悔しくなる。
翌日にはあっさり逆転する。
株価が下がれば、二人まとめて沈む。
なんとも不毛である。
でも、そんな不毛な会話ができるのも、夫婦で投資をしているからこそなのだと思う。
資産形成という真面目な目的のはずなのに、気づけば夫婦で小さな株価バトルをしている。
本来なら「二人のお金が増えてよかったね」で終わる話なのに。
……まあ、今日くらいは筆者の勝ちということで。
明日のことは知らない。

