投資を続けていると、「買って良かった株」よりも、「売って後悔した株」の方が記憶に残る。
利益が出たかどうかではない。
その売買から何を学んだかが、その後の投資スタイルを大きく変えることがある。
筆者には、そんな存在が二銘柄ある。
一つは、高速(7504)。
もう一つは、ライト工業(1926)。
どちらも2020年頃、自分でスクリーニングをかけて見つけた銘柄だった。
どちらも「いい会社だ」と思って購入した。
しかし、その後の行動は正反対になった。
そして、その違いが今の投資方針を作っている。
自分で見つけた「高速」という会社
2020年頃、筆者は高配当株を中心に企業を調べることが楽しくなっていた。
四季報を開き、財務を見て、配当を確認する。
有名企業だけではなく、「こんな会社があるんだ」と驚くような企業を見つける時間が好きだった。
そんな中で出会ったのが、高速だった。
軽包装資材を扱う専門商社。
派手さはない。
SNSで話題になることも少ない。
それでも、業績や財務、配当方針を見て、「これはいい会社だ」と思えた。
だから買った。
誰かが勧めていたからではない。
自分で調べ、自分で納得して買った銘柄だった。
その後、高速は少しずつ市場から評価されるようになった。
気が付けば、評価益は約90%。
もちろん途中で利益確定しようと思ったこともある。
でも、そのたびに思い返した。
「この会社を買った理由は、何か崩れただろうか。」
答えはいつも「いいえ」だった。
業績が急激に悪化したわけでもない。
配当方針が変わったわけでもない。
会社に対する評価が変わったわけでもない。
だったら、持ち続ければいい。
高速は、「いい会社を見つけること」よりも、「いい会社を持ち続けること」の大切さを教えてくれた。
ライト工業でやってしまったこと
一方で、ライト工業も同じように自分で見つけた会社だった。
こちらもスクリーニングで見つけた。
事業内容を調べ、業績を見て、「いい会社だ」と思った。
だから購入した。
ここまでは高速と同じだった。
違ったのは、その後だった。
2024年頃、株価が大きく上昇した。
含み益も十分に乗っていた。
そして、ふと思ってしまった。
「ここまで上がったなら、もう十分かな。」
「そろそろ天井かもしれない。」
その時の筆者は、利益を失うことが怖かった。
せっかく増えた含み益を減らしたくない。
その気持ちが勝ってしまい、売却した。
しかし、その後も株価は上昇を続けた。
チャートを見るたびに思う。
「まだ上がるのか。」
もちろん、未来は誰にも分からない。
売った時点では、その判断が間違いだったとは言えない。
それでも、今振り返ると、一つだけはっきりしていることがある。
自分が買った時のシナリオは、何一つ崩れていなかった。
業績が悪くなったわけでもない。
会社の魅力が失われたわけでもない。
なのに、「株価が上がった」という理由だけで売ってしまった。
これは今でも後悔している。
2026年10月時点で株式分割で4分割になったと知り、ますます後悔している。
売る理由は、株価ではなくシナリオで決めたい
高速とライト工業。
この二つの銘柄は、筆者に真逆の経験をさせてくれた。
高速は、「信じた会社を持ち続ける勇気」を教えてくれた。
ライト工業は、「株価だけを見て売る怖さ」を教えてくれた。
それ以来、筆者は売却するときに、一つだけ自分へ問いかけるようになった。
「買った時に描いていたシナリオは崩れたか。」
もし崩れているなら、売る理由になる。
業績が悪化した。
競争優位性が失われた。
財務が急激に悪くなった。
そういう変化があれば、売却を考える。
でも、何も変わっていないなら。
ただ株価が上がっただけなら。
その理由だけでは、売らないようにしている。
良い会社を買う力より、持ち続ける力
投資本には、「良い会社を見つけよう」とよく書かれている。
もちろん、それは大切だ。
でも最近の筆者は、それ以上に難しいことがあると思っている。
それは、「持ち続けること」だ。
株価が下がれば不安になる。
株価が上がれば利益を確定したくなる。
人間の感情は忙しい。
だからこそ、本当に難しいのは、会社そのものを見続けることなのだと思う。
高速は、その難しさを教えてくれた。
ライト工業は、その難しさに負けた時の悔しさを教えてくれた。
あの後悔を、次に生かす
投資で後悔をゼロにすることはできない。
「あの時買えばよかった。」
「あの時売らなければよかった。」
そんな経験は、きっと誰にでもある。
でも、その後悔から何も学ばなければ、同じことを繰り返してしまう。
筆者にとって、高速とライト工業は、どちらも大切な先生だった。
一方は成功体験を。
もう一方は失敗体験を。
その二つがあったからこそ、今は「株価」ではなく「シナリオ」を見る投資を意識できるようになった。
良い会社を見つける力は、これからも磨いていきたい。
そして、それ以上に難しい「良い会社を持ち続ける力」も、少しずつ育てていきたいと思っている。

