「落ちるナイフはつかむな」
株式投資をしていると、一度は聞く言葉だと思う。
株価が急落している銘柄を見て、
「こんなに下がったなら、もう安いだろう」
と買ってしまう。
ところが、自分が買ったところは底ではなかった。
さらに下がる。
そしてまた下がる。
気づけば、自分の手にはナイフが刺さっている。
これが「落ちるナイフ」である。
筆者も、この格言を知らないわけではない。
むしろ、知っている。
知っているのに、拾ってしまった。
これまでに筆者が拾った落ちるナイフが、グローブライドと花王である。
グローブライドという落ちるナイフ
まずはグローブライド。
釣り用品などを展開する企業である。
筆者がこの銘柄に興味を持った理由の一つが株主優待だった。
しかし、それだけではない。
配当もあり、長期的に保有する候補として見ていた。
ところが、株価が下落していく。
普通なら、
「もう少し待とう」
となるところなのかもしれない。
しかし、筆者はチャートを眺めながら考えた。
「いや、これ……さすがに安くない?」
そして、拾った。
結果はどうだったか。
もちろん、買ったらすぐ上がるほど株式市場は甘くない。
買った後も下がる。
「やっぱり落ちるナイフだったじゃん」
となる。
それでも、最初から長期保有を前提としていたこともあり、すぐに投げ売りすることはしなかった。
配当を受け取りながら、会社の状況を見る。
株価だけを見ていると、
「なんでこんなに下がるんだ」
となる。
しかし、株価が下がっている理由と、会社そのものの価値が下がっている理由は必ずしも同じではない。
ここを分けて考えることが大切なのだと思う。
花王でも拾ってみた
そしてもう一つ、花王。
こちらはグローブライドとはかなり性格が違う。
誰もが知る生活用品メーカーであり、筆者が好きなディフェンシブ銘柄の一つでもある。
そんな花王も、筆者が見ていた時期には株価が大きく下がっていた。
「花王までこんなに売られるのか」
と感じたのを覚えている。
しかし、会社そのものを見てみる。
生活用品を扱う。
日常生活に必要な商品が多い。
長年のブランドもある。
そして配当もある。
もちろん企業なので業績や成長性を確認する必要はある。
それでも、
「この会社をこの価格で持つのは、そこまで悪くないのでは?」
と思った。
そして、こちらも拾った。
ところが当然のように、買ったらすぐに上がるわけではない。
株価とは、本当に思い通りにならない。
落ちるナイフを拾うときに考えること
この2銘柄を経験して、筆者なりに思うことがある。
落ちるナイフを拾うこと自体が悪いわけではない。
問題なのは、
「下がっているから安い」と短絡的に考えてしまうこと
なのだと思う。
株価が下落するには理由がある。
業績が悪化した。
利益が減った。
将来性が疑問視されている。
市場全体が暴落している。
セクター全体が売られている。
一時的な悪材料が出た。
理由はさまざまだ。
その理由を確認せずに、
「前は3,000円だった株が2,000円になった!33%オフ!」
と買うのは、かなり危険だ。
株に値札がついているわけではない。
3,000円だったものが2,000円になったからといって、必ずしも割安とは限らない。
「なぜ下がっているのか」を考える
筆者が下落している銘柄を見るとき、まず考えるのは、
「なぜ下がっているのか?」
である。
これが分からないまま買うのは怖い。
逆に、理由がある程度分かっていて、
「この悪材料は一時的だと思う」
「会社の長期的な価値までは毀損していない」
と思えるなら、少しずつ買うという選択肢は出てくる。
もちろん、これはあくまで筆者の考え方。
株価の底を当てられるわけではない。
実際、グローブライドも花王も、筆者が買ったところが底だったわけではない。
むしろ、
「まだ下がるんかい!」
と思うこともある。
だからこそ、落ちるナイフを拾うなら資金管理が重要になる。
一気に拾わない
落ちるナイフを拾うときに、
「ここが底だ!」
と全力で買ってしまうのは避けたい。
底だと思った場所が底ではないからだ。
だったら、最初から「もっと下がるかもしれない」と考えておく。
少し買う。
さらに下がったら、もう少し考える。
会社の状況を確認する。
まだ保有理由が崩れていなければ、さらに買う。
もちろん、無理にナンピンする必要もない。
大切なのは、
「下がっても困らない金額で買う」
ことだと思う。
落ちるナイフを拾う技術より、落ちてきたナイフに全財産を突っ込まない技術のほうが、個人投資家には重要なのかもしれない。
そして、ナイフが止まるのを待つ
結局のところ、株価の底は誰にも分からない。
だから「底で買う」という発想自体を少し手放したほうがいいのかもしれない。
底を当てるのではなく、
「まだ下がる可能性がある」
という前提で保有する。
それでも持ち続けられる銘柄だけを選ぶ。
そのためには、やはり企業を見る必要がある。
配当だけを見る。
優待だけを見る。
過去の株価だけを見る。
それではなく、今の業績や財務、今後の事業環境を見る。
そして、自分が最初に描いた投資シナリオが崩れていないかを確認する。
おわりに
「落ちるナイフはつかむな」
これは非常に正しい格言だと思う。
ただ、株式投資を続けていると、どうしても拾いたくなる瞬間がある。
筆者もグローブライドと花王で拾った。
もちろん、拾った瞬間に株価が反発してくれたわけではない。
むしろ、
「やっぱりナイフだった!」
と思ったこともある。
それでも、会社を調べたうえで「この会社なら持ち続けられる」と判断したのであれば、多少の下落には耐えられる。
結局のところ、重要なのはナイフを拾うことではない。
「なぜ、そのナイフを拾ったのか」を自分で説明できること。
そして、さらに落ちたとしても耐えられるだけの資金管理をしておくこと。
これさえできていれば、落ちるナイフもただの恐ろしい凶器ではなく、将来の資産になる可能性がある。
……とはいえ、毎回うまくいくとは限らない。
株式投資は自己責任。
だから今日も筆者は、ナイフが落ちているのを見つけたら、一度立ち止まって考える。
これは本当にナイフなのか。
それとも、
ただのバーゲンセールなのか。
答えは、会社の中身を見てから決めたいと思う。
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