株を買いたい。
そう思ったとき、投資家はよく言う。
「もう少し下がってくれたら買うのに」
筆者もよく言う。
高いところで買いたくはない。
できれば安く買いたい。
だから株価が下がると、
「お、下がった」
と思う。
さらに下がると、
「もうちょっと下がってくれてもいい」
なんて思う。
ところが。
本当に下がると、怖くなる。
これは一体、どういうことなのだろう。
■ 「もっと下がれ」と思っていたはずなのに
最近、筆者は3銘柄ほど新しく株をお迎えした。
どれも、
「このあたりなら買ってもいいかな」
と思って買った銘柄である。
もちろん、買う前にはそれなりに考えている。
株価が高すぎないか。
配当はどうか。
今後も持ち続けられそうか。
自分の投資スタイルに合っているか。
いろいろ考えて、最終的に購入する。
そして買った翌日。
下がる。
「……まあ、あるよね」
さらに下がる。
「……もうちょっと下がることもあるよね」
さらに下がる。
「ちょっと待って」
このあたりから雲行きが怪しくなる。
買う前は、
「もう少し下がってくれたら買いやすい」
と思っていたはずなのだ。
なのに、いざ自分が買った瞬間から下がり続けると、
「そこまで下がれとは言ってない」
となる。
非常に勝手である。
■ 安く買いたい。でも含み損は嫌い
投資家として考えれば、安く買えることは悪いことではない。
同じ株なら、安く買えたほうがいい。
将来的に上がると考えているなら、なおさらである。
だから株価が下がったとき、
「買い増しのチャンス」
と考えることもできる。
実際、筆者もそういう考え方をする。
しかし、それと同時に、
「自分が買った株が下がっている」
という事実は普通に嫌である。
買った直後に含み損になる。
スマホを開く。
不穏な数字が見える。
「うわあ」
となる。
そして思う。
「もっと下がれと思ってたの、昨日の自分じゃん……」
昨日の自分を殴りたい。
■ 株価は、こちらの都合を聞いてくれない
さらに厄介なのが、株価は筆者の気持ちなど一切考慮してくれないことである。
「ここまで下がったら買おう」
と思って指値を入れる。
刺さる。
やった。
買えた。
そして下がる。
指値が刺さった瞬間は嬉しかったのに、その後も下がると急に不安になる。
「もしかして、まだ高かった?」
そんなことを考え始める。
でも、翌日に戻ることもある。
前日まで含み損だったのに、翌日には何事もなかったように上がっている。
すると今度は、
「なんだ、心配して損した」
となる。
株価というものは、本当に人の感情を振り回してくる。
■ でも、戻らないこともある
ここで一番怖いのは、もちろん「そのまま戻らない」ケースである。
株価が下がる。
翌日も下がる。
その翌日も下がる。
「まあ、そのうち戻るでしょ」
と思っていたら、全然戻らない。
こうなると、
「安く買えた」
という言葉の意味が怪しくなってくる。
安くなったのではなく、
「安くなり続けている途中だった」
可能性もあるからだ。
落ちるナイフを拾う、なんて言葉がある。
落ちている途中の株を「安い!」と思って拾ったら、さらに落ちる。
そしてまた拾う。
また落ちる。
……やめてくれ。
だから株価が下がったとき、
「安くなった!」
と喜ぶだけではいけない。
なぜ下がっているのかを見る必要がある。
市場全体が下がっているのか。
その業種全体が下がっているのか。
それとも、その会社自身に何か起きているのか。
同じ「株価が下がる」でも、中身はまったく違う。
■ 最近3銘柄を買ってみて思ったこと
そんなことを考えながら、最近お迎えした3銘柄を眺めている。
3銘柄とも、買ったあとに似たような気持ちになった。
買う前は、
「もう少し安くならないかな」
と思っていた。
買えたら、
「よし、買えた」
と思った。
その後下がったら、
「……いや、そこまでは望んでない」
となった。
そして翌日に戻ったら、
「ほらね」
となる。
戻らなかったら、
「……ほらね、じゃないんだよ」
となる。
同じ株価の下落なのに、自分のポジションがあるだけで感情が全然違う。
買う前ならチャンス。
買った後なら恐怖。
なんとも都合のいい話である。
■ 「下がってほしい」と「下がらないで」は両立する
結局のところ、筆者が欲しいのは、
「自分が買った瞬間を底にして、そこから上がる株」
なのだと思う。
そんな都合のいい株、そうそうない。
買った直後に下がることもある。
その翌日に戻ることもある。
何年経っても戻らないこともある。
だから、「安く買いたい」という気持ちだけで買うのは危険なのだろう。
下がったときに、
「この会社を買った理由はまだ残っているか」
を考えられるようにしておきたい。
もちろん、実際に下がったら怖い。
投資歴が何年になろうと、そこは変わらない。
含み損を見て、
「大丈夫、大丈夫」
と平静を装いながら、もう一回株価を確認する。
そしてまた確認する。
人間、そんなに合理的ではない。
■ それでも株を買う
それでも筆者は株を買う。
安く買いたいから。
長く持ちたいと思える会社を見つけたいから。
そして、買った後に上がるか下がるかは、もう自分ではどうにもできないからだ。
株価が下がったら怖い。
でも、買いたかった株が安くなれば嬉しい。
この二つの感情は、たぶんずっと同居する。
「もっと下がってくれ」
と思いながら、
「でも私が買ったところより下には行かないで」
と思う。
非常に矛盾している。
最近お迎えした3銘柄を見ながら、改めて思った。
株価が下がると嬉しい。
でも。
下がりすぎると、やっぱり怖い。
投資家とは、なかなか面倒な生き物である。

