株を買った。
「この会社、いいじゃん!」
業績も悪くない。
配当もある。
将来性もありそうだ。
よし、買おう。
そして翌日。
下がる。
まあ、1日くらいなら気にしない。
「ちょっとした調整でしょ」
さらに翌日。
もっと下がる。
「まあ、長期投資だし」
その翌日。
さらに下がる。
「配当目的だから……」
ここまで来ると、少し様子がおかしくなってくる。
そして最終的には、
「頼むから買値まで戻ってくれ」
と祈り始める。
投資判断だったはずなのに、いつの間にか祈りゲーになっている。
これが、筆者の考える「高値掴み」の恐ろしさである。
買った瞬間から含み損
個別株をやっていると、高値掴みは避けて通れない。
「ここが安いだろう」と思って買ったら、そこからさらに下がる。
「今度こそ底だろう」と思って買い増したら、さらに下がる。
株式投資とは、なかなか思い通りにならない。
もちろん、買った直後から上がってくれるのが一番嬉しい。
含み益がどんどん増えていく。
「自分の判断は正しかった!」
と気分もいい。
しかし、そんなに毎回うまくいくわけではない。
むしろ、買った直後に下がることくらい普通にある。
問題は、下がったことそのものではない。
下がった後、自分がどう考えるか。
ここが大事なのだと思う。
最初は冷静だったはずなのに
株価が少し下がったくらいなら、まだ余裕がある。
「まあ、こんな日もあるよね」
ところが含み損が大きくなってくると、だんだん精神状態が変わってくる。
「なんで買ったんだろう」
「もう少し待てばよかった」
「そもそもこの会社、大丈夫なのか?」
そして最後には、
「お願いだから戻ってください」
となる。
もはや分析ではない。
祈りである。
チャートを眺めながら祈る。
決算資料を読みながら祈る。
SNSを見ながら祈る。
そして株価アプリを閉じて、現実から目を背ける。
個別株投資家なら、一度くらい経験があるのではないだろうか。
一番怖いのは「買値」に執着すること
高値掴みをしたとき、筆者が気をつけたいと思っているのが「買値への執着」である。
例えば、1株2,000円で買った株が1,500円まで下がったとする。
すると、
「2,000円まで戻ったら売ろう」
と考えてしまう。
しかし、よく考えるとおかしい。
なぜ2,000円なのだろう。
それは単に、自分が2,000円で買ったからである。
市場にとって、自分の買値など知ったことではない。
現在の株価が1,500円なら、今この会社を1,500円で買いたい人と売りたい人がいる。
重要なのは、
「自分が2,000円で買った」という過去ではなく、「今、この会社をどう評価するか」
なのだと思う。
買った理由をもう一度確認する
では、株価が下がったときに何をすればいいのか。
筆者の場合、まず「なぜこの株を買ったのか」を確認する。
配当が魅力だったのか。
業績の成長に期待したのか。
優待が欲しかったのか。
ブランド力に惚れたのか。
ニッチトップで参入障壁が高いと思ったのか。
買ったときに描いていたシナリオを思い出す。
そして、
そのシナリオは今も生きているのか?
を見る。
ここが重要だ。
株価が下がったからといって、必ずしも企業の価値まで下がったとは限らない。
市場全体が下がっているだけかもしれない。
セクター全体が売られているだけかもしれない。
一時的に決算が市場予想を下回っただけかもしれない。
逆に、業績悪化や財務状況の悪化など、企業そのものに大きな変化が起きている可能性もある。
その場合は話が変わってくる。
「買値まで戻って!」ではなく「今でも欲しい?」
高値掴みしたときに自分へ問いかけたいのは、
「買値まで戻ってくれるかな?」
ではない。
「もし今この株を持っていなかったら、現在の株価で買いたいと思うか?」
だと思う。
この問いに「はい」と答えられるなら、慌てて売る必要はないかもしれない。
逆に、「いや、今の状態なら買わないな」と思うのであれば、買値に関係なく考え直す必要がある。
自分の買値を基準にしてしまうと、判断がどんどん歪んでいく。
「損を確定させたくない」という感情が、企業分析よりも強くなってしまうからだ。
高値掴みを完全になくすことはできない
どれだけ勉強しても、株価の未来を完璧に当てることはできない。
「これは割安だ」と思って買った株が、さらに安くなることもある。
「ここが底だ」と思って買ったら、底がもっと下だった。
そんなことはいくらでもある。
だから筆者は、高値掴みを完全になくそうとは思っていない。
むしろ、
高値掴みしてしまった後に、どう振る舞うか。
こちらのほうが重要だと思っている。
資金管理をしておく。
一度に全額を突っ込まない。
余力を残す。
長期保有するつもりなら、短期的な値動きに振り回されすぎない。
そして何より、SNSの雰囲気だけで判断しない。
祈る前に、一次情報を見る
株価が大きく下がったときほど、SNSを見たくなる。
「○○株、終わった」
「まだまだ下がる」
「これは買い場!」
いろいろな意見が飛び交っている。
しかし、それを見ているうちに余計に不安になることもある。
だから筆者は、できるだけ一次情報を見るようにしている。
会社が発表した決算。
IR資料。
業績予想。
財務状況。
自分が投資した理由と照らし合わせる。
それでも問題がないと思えるなら、あとは待つ。
逆に、最初に描いていたシナリオが崩れているなら、損切りも選択肢に入れる。
「買値まで戻るまで待つ」ではない。
「保有し続ける理由があるから待つ」。
ここは大きな違いだと思う。
おわりに
高値掴みをすると、最初は誰でも苦しい。
含み損を見るたびに、
「買うタイミングを間違えたかな」
と思う。
そして、そのうち、
「頼むから戻ってくれ」
と祈り始める。
筆者も人間なので、もちろん株価が下がれば多少は気になる。
ただ、個別株を続けていくうちに、少しずつ分かってきたこともある。
大切なのは、自分の買値ではない。
その会社が今どうなっているのか。
そして、これからも保有する理由があるのか。
高値掴みしてしまったら、祈る前に買った理由を思い出す。
企業の現在を見る。
シナリオが生きているなら、待つ。
崩れているなら、判断する。
それでもどうしても不安になったら……。
まあ、少しくらい祈ってもいい。
ただし、祈りながらでも決算資料は読む。
それが、個別株投資家の最低限の矜持なのかもしれない。
