投資を始めたばかりの頃、含み損はとにかく怖かった。
買った株が下がる。
含み損が増える。
さらに下がる。
そうすると、「何か悪いことが起きているのではないか」と不安になる。
今でこそ、ある程度の含み損なら「まあ、そういうこともある」と思えるようになった。
しかし、最初からそうだったわけではない。
株式投資を続けていく中で、含み損との付き合い方を少しずつ覚えていった。
その過程で筆者が特に意識するようになったのが、「情報から距離を置くこと」だった。
第一に、株価を見ない
含み損になったとき、筆者がまずやること。
それは、株価を見ないことである。
もっと正確に言えば、株価アプリにログインしない。
株価が下がっているとき、人間は不思議なものである。
一度気になってしまうと、何度も確認してしまう。
朝見て下がっている。
昼休みに見てさらに下がっている。
仕事が終わって見たら、また下がっている。
そして翌朝も確認する。
これを繰り返していると、株価の上下が頭から離れなくなる。
しかし、株価を何度確認したところで、企業の業績が良くなるわけでもない。
自分の保有株の価値が上がるわけでもない。
ましてや、株価を見続けることで冷静な判断ができるようになるとも限らない。
むしろ筆者の場合、判断力が落ちる。
だから、下がっているときほど見ない。
一時的に株価アプリから距離を置く。
これだけでも、かなり気持ちが楽になる。
第二に、Yahoo!掲示板を見ない
そして、もう一つ距離を置くようになったのがYahoo!ファイナンスの掲示板である。
もちろん、掲示板そのものが悪いわけではない。
いろいろな投資家の意見を見ることができるし、情報収集のきっかけになることもある。
ただ、株価が大きく下がっているときに見ると、精神衛生上あまりよろしくない。
「もう終わりだ」
「明日はさらに下がる」
「逃げたほうがいい」
そんな不安を煽るような投稿が目につきやすくなる。
逆に株価が上がっているときは、
「まだまだ上がる」
「買わない奴は損」
といった投稿が増える。
人間の感情が、そのまま文字になって並んでいる場所でもある。
含み損を抱えて不安になっているときに、さらに不安を煽る情報を浴びれば、冷静でいられなくなるのも無理はない。
筆者はそこから距離を置くことにした。
第三に、YouTubeを見ない
同じ理由で、株式投資関連のYouTubeも見ないようにしている。
特に株価が急落しているときは注意が必要だ。
「暴落の理由を解説します」
「今すぐ売るべき銘柄」
「まだ逃げていない人は危険」
そんなタイトルの動画が目に入ってくる。
もちろん、本当に有益な情報を発信している人もいる。
しかし、不安になっているときの自分にとって、それが必要な情報なのかは別問題だ。
動画を見れば見るほど不安になり、さらに別の動画を見る。
気づけば1時間経っている。
そして最後には、
「やっぱり売ったほうがいいのかな……」
となる。
これでは何のために投資をしているのか分からない。
不安なときほど「情報を増やさない」
投資を始めた頃の筆者は、不安になったら情報を集めればいいと思っていた。
株価が下がった。
なぜ下がったのか調べよう。
ニュースを読む。
掲示板を見る。
YouTubeを見る。
SNSを見る。
しかし、実際には逆だった。
不安なときほど、情報を増やすことで余計に混乱することがある。
特に株式市場には、毎日のように新しいニュースが出てくる。
金利。
為替。
海外情勢。
決算。
政治。
景気。
一つ一つに反応していたら、とても長期投資などできない。
だから筆者は、情報収集をやめるのではなく、情報との距離を調整するようになった。
代わりに投資の本を読み直す
では、何をするのか。
筆者の場合は、投資の本を読み直す。
特におすすめしたいのが、『ウォール街のランダム・ウォーカー』である。
市場は常に合理的に動くわけではない。
株価は上がることもあれば、下がることもある。
短期的な値動きを予測することには限界がある。
そんな投資の基本的な考え方を改めて思い出す。
毎日の株価を見ると、目の前の数字に振り回される。
しかし本を読み直すと、「そもそも自分は何のために投資をしているのか」と立ち返ることができる。
これは筆者にとってかなり大きかった。
そのうち「下がった理由」を見るようになる
そんなことを繰り返しているうちに、少しずつ変化が出てきた。
以前なら、
「含み損になった。怖い」
だったのが、
「この下落は何が原因なんだろう」
と考えられるようになってきた。
さらに、
「自分がこの会社を買ったときの理由は崩れているだろうか」
と考えるようになった。
ここが大きな変化だったと思う。
株価が下がった。
それだけなら、投資判断を変える理由にはならない。
自分が買ったときに期待していた企業の成長性や収益力が失われたのか。
当初描いていたシナリオが崩れたのか。
そこを確認する。
もし株価だけが下がっていて、企業そのものに大きな変化がないのであれば、
「むしろ仕込みどきなのでは?」
と考えられる場面もある。
もちろん、何でもかんでも「下がったら買い」ではない。
企業の業績が悪化している場合もある。
投資判断を間違えている可能性だってある。
だからこそ、株価ではなく、自分がその株を買った理由に立ち返る。
含み損に慣れるということ
含み損に慣れるというのは、含み損が怖くなくなることではないのかもしれない。
「怖いけれど、慌てて売る必要はない」
そう思えるようになることなのだと思う。
株価が下がれば、今でも多少は嫌な気持ちになる。
含み益が減れば、「おお……減ったな」と思う。
そこは人間なので仕方がない。
ただ、以前のように感情だけで売却することはなくなった。
そのために筆者がやってきたのは、意外とシンプルだった。
株価を見ない。
掲示板を見ない。
煽るようなYouTubeを見ない。
そして、投資の本を読み直す。
不安になったときほど、情報を増やすのではなく、一度距離を置く。
その時間を使って、自分がなぜその会社を買ったのかを考える。
長期投資を続けるために必要なのは、相場を完璧に予測する能力ではない。
もしかすると、自分の感情を暴走させないための環境を作ることなのかもしれない。
含み損は、投資をしていれば避けられない。
だからこそ、含み損をゼロにする方法ではなく、含み損を抱えても狼狽売りしない方法を身につける。
筆者にとって、それが投資を長く続けるための一つの答えになっている。
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